2019 3つの提言 (1) 安心して子どもを産み、育てることができる社会へ

-子どもの保育・居場所の充実-

新宿区では、保育園待機児童問題に集中的に取り組んできたことから、保育園の待機児童数は2015年の168人から2018年の25人へと減少しています。引き続き定員拡大に取り組むことで待機児童ゼロの実現が視野に入ってきました。
他方で、保育園に通っていた子どもたちが小学校に上がると、特に低学年の間は放課後(保護者が仕事から帰宅するまでの間)の保育・居場所が必要になります。学童保育(学童クラブ)を利用できないことによって保護者の就業に支障をきたす「小1の壁」が各地で問題となっています。
新宿区では2016年から2018年の間に区立学童クラブの在籍数が約180名増加した一方で、定員は20名分しか増えておらず、需給のギャップが拡大しています。大幅な定員オーバーとなっている学童クラブがいくつもあり、早急な定員拡大等の対応が求められています。
区では、2019年度に次期「子ども・子育て支援事業計画」を策定して対応する方針を示していますが、具体的な計画は未だ明らかになっていないため、この点を確実に進める必要があります。
また、学童クラブに子どもが通う保護者の間では、学校休業期間中の昼食の提供が問題となっています。お弁当を持たせることが原則となっていますが、保護者の負担や夏場のお弁当の安全管理のことを考えると、学童クラブにおいて昼食提供を行う選択肢もあります。
区では、衛生管理やアレルギー対応等の課題があるため学童クラブで昼食を提供することは検討しないとの立場ですが、既に23区内の千代田、中野、板橋、葛飾で実施されていることから、区が挙げる課題は解決可能であると思われます。
次世代を担う子どもたちの保育・教育は、自治体にとって最も重要な事業の一つです。また、共働きで子どもを育てる家庭の多い新宿区では、子どもの保育環境を充実させることは、区民の生活の質の向上に直結します。こうしたことから、子どもの保育・居場所の充実に向けて、さらなる施策を講じる必要があります。

2019 3つの提言 (2) 地域のきずなを取り戻す

-高齢化が進む地区の防災対策支援-

新宿区では、マンション防災を促進するため、2019年度からマンションの自治防災組織に対する防災用資機材等の助成制度を開始します(年10組織に対して全体で200万円)。しかし、約4400棟あるとされる集合住宅のうち、独居・高齢者が多く住まわれる集合住宅については、「自助・共助」の体制づくりが難しく、特に支援が必要です。
区内では、都営住宅が設置された地区の高齢化率が高いところ、独居・高齢化という課題は、東京都の住宅政策により人為的に形成されてきた側面があります。住民自身の「自助・共助」による防災対策が難しくなる中、今後は都営住宅の設置者である東京都も、新宿区とともに住民の支援を行うべきです。
代表質問において質問したところ、新宿区においては、今後、都との協議を一層深め、都営住宅に防災活動拠点の整備や防災倉庫の設置などの防災対策の充実を図る都のことです。しかし、地域の防災力を高めるにはマンパワーが必要であり、そのためには都営住宅に防災対策を行う都や区の職員の住宅を積極的に設置するなどの対応も必要であると考えます。

-新宿区の自治の推進-

新宿区では、「自治の基本理念、基本原則の確立」を目指して2011年に自治基本条例を制定しました。そこでは、17条において「投票制度を設ける」との文言で住民投票制度を創設した一方、実施の発議や投票に参加できる「有権者」の定義が定まっていないため、せっかくの制度が宙に浮いた状態が続いています。
区は、住民投票制度には、投票の対象とすべき事項、選挙で選ばれた長や議会の権限との関係、投票結果の拘束力のあり方など、地方自治制度との関係で検討すべき多くの論点があるほか、外国人の住民投票への参加についても議論があると述べる一方で、それらの論点について議論を整理する姿勢を見せていません。
自治基本条例25条では、区長は、「条例及び関連する諸制度について、区民及び議会とともに検証を行い、条例の趣旨を踏まえて必要な措置を講ずる」(25条)こととされており、これ以上「課題の整理」を理由に足踏みを続けることは適切ではありません。議会においても、自治・議会・行財政改革等特別委員会を中心に、この問題を継続的に議論し続ける必要があります。

2019 3つの提言 (3) オリンピック後を見据えた生活重視型予算配分

これまでの4年間、災害対策(福祉避難所の充実、来街外国人の支援、高齢化率が高い地域の支援等)、子育て支援(子供の貧困対策、居場所づくり、児童相談所開設等)、地域活性化・地域振興(再開発・まちづくりの方針等)、多文化共生・ヘイトスピーチ対策などを中心に、質問や提言をしてきました。
現在、新宿区では、オリンピック・パラリンピック開催を目前にして、新宿駅周辺地区等の「にぎわい」創出や、来街者の利便性向上、オリンピックに向けたムードづくりなどに重点が置かれています。これらは来年前半までは必要な施策ですが、そろそろ「オリンピック後」の区民生活を下支えする施策の強化を考えるべきです。2020年度、2021年度の予算を策定するにあたっては、「生活重視型予算」を組むよう働きかけてまいります。