-地域のきずなを取り戻す-

地域の人々の交流の核となるコミュニティ・スクールへ

近年、新宿区では、区立の小中学校の一部を地域協働学校(「コミュニティ・スクール」)として指定し、指定を受けた学校では、教員と保護者や地域住民代表で構成される地域協働学校運営委員会を設置しています。

このコミュニティ・スクールの趣旨は、学校の運営に保護者や地域住民等が参画することで、地域に信頼され、地域に支えられる開かれた学校づくりを進めることにあるとされています。実際に、コミュニティ・スクールに指定された学校では、保護者や地域の方々により、子どもたちの学習や読書の支援、放課後の居場所提供、登下校の見守りや、学校の環境美化支援などが実施されています。このような取り組みを新宿区すべての小中学校に広げていくことは、子どもたちの教育環境をより良いものにするためにも大変重要です。

ただ、現在のコミュニティ・スクールは、学校運営の手法として設計されているため、参画する地域の方々は、すでに地域の小中学校における教育に関心をもって活動されてきた方に限られてしまいます。私は、コミュニティ・スクールを、学校運営の手法としてだけではなく、地域の人々の相互交流の場、また世代間交流の場として活用することで、子どもたちの教育環境の向上だけでなく、より多くの方が地域の子どもたちの教育に関与することへの敷居が下がるよう、インセンティブとなる仕組みを設けるべきと考えます。

例えば、小中学校の施設を、地域住民による学習、趣味や創作、ボランティア活動等のサークル活動の場として開放することが考えられます。サークルに参加する地域の方々は、同じ関心を持つ人同士のネットワークに参加することができます。それとともに、学校設備を利用するサークルに対し、定期的に子どもたち向けのプログラム(例えば、手芸サークルであれば、1か月に1度の放課後子どもひろばや放課後学童クラブ向け手芸教室など)を提供し、地域の子どもたちの教育に関与することをお願いします。これによって、世代間の交流も活発になり、また子どもたちに多様な経験の機会を用意することもできるようになります。

町会活動、商店会イベント等への地域の人々の幅広い参加促進

町会・自治会活動や商店会は、これまで地域の人々を結びつけ、お互い助けいあいながら生活していくための基盤となってきました。しかし、少子高齢化や単身世帯の増加に見られる地域住民の流動化によって、その活動に参加する人が徐々に減っているのが現状です。

新宿区の意識調査によれば、区民の半数以上が地域や団体の活動に参加していない状況です。しかし同時に、「参加したくない」と考えている人は4分の1程度です。つまり、参加していない人々は、必ずしも地域の活動に参加したくないから参加しないのではありません。参加する機会があったり、あるいは参加する意義を見出すことができれば、相当程度の人々が、地域活動に参加することが期待できます。

千代田区では、人口減少・高齢化のために統廃合の対象となった小学校跡地を利用した再開発プロジェクトの中で、地域活動への参加を入居条件とする「ワテラススチューデントハウス」という学生マンションが作られました。地域の大学に通う学生の力を街づくりに生かそうという試みです。学生にとっては、大学に近い物件に割安に住むことができるメリットがあります。

新宿区と千代田区とでは条件が異なり、同様のプロジェクトを行うことは容易ではないかもしれません。しかし、地域に縁のある人々に地域活動への参加を促す制度を導入することで、これまで地域活動参加してこなかった人の力を街づくりに生かそうというアイデアには、学ぶところがあります。

例えば、提言1で述べたような、幼い子どものいる方が地域活動に参加した場合には、住居費を補助したり、地元商店会で使用できる地域通貨と交換可能なポイントを付与するなどの仕組みが考えられます。また、前に述べた、コミュニティ・スクールを地域の方々のサークル活動に開放する試みと同時に、そういったサークル活動と、町会、商店会のイベントとを連携させることで、地域の学校を媒介として、これまで地域活動に関わってこなかった人々を、町会や商店会の活動に誘導することが考えられます。

-文化的多様性を新宿の強みに-

現在、新宿区の住民の約1割は外国籍であり、今後、東京の国際化が進む中、この割合が高くなることが予想されます。実際、街を歩けば中国、韓国、ベトナム、インド・ネパール、タイなどの各国料理のレストランが並び、実際にこれらの国々から来た人々がその経営を行っているのを目にすることが珍しくありません。また、子どもたちの通う小学校でも、外国籍のクラスメートがいることは当たり前の環境になっています。

このような新宿区の状況は、外国籍の人々が地域社会にうまく根付くことができれば、国際都市としての新宿の発展のエネルギーとなりえます。そのためには、外国籍住民と日本人住民とのコミュニケーションを活性化し、新宿に「共生」の文化を根付かせる施策が必要です。

新宿区では、多文化共生のため、すでに新宿未来創造財団を中心した取り組みが進められています。例えば、歌舞伎町にある新宿多文化共生プラザでの交流イベント、地域センターなどでの日本語教室や、外国にルーツを持つ子供たちのための日本語学習支援プログラムの提供などが挙げられます。

このような区の取り組みは、一定の効果を上げている一方、新宿未来創造財団に機能を集中した仕組みでは、外国籍住民と日本人住民の双方とも、同財団の存在と活動内容を知って自分からアクセスする必要があり、限界もあります。新宿未来創造財団を中心としながらも、より地域に根差し、地域住民に対する発信力のある施設である、小中学校を拠点とした分散型の仕組みを導入することを検討すべきです。

例えば、小中学校に通う外国籍児童・生徒の父兄を中心とする外国籍住民に対する日本人父兄などの地域住民による日本語教室、日本文化紹介イベントの開催や、小中学校単位で、それぞれの出身国・地域の言語、文化を紹介しあうイベントを開催することなどが考えられます。また、提言2で述べたコミュニティ・スクールの機能拡張の中で、異文化交流サークルを設けることも考えられます。